【症例の概要】
初診時年齢29歳9か月の女性。叢生と咬合の改善を主訴 に来院した。顔貌所見は正貌では下顎の左偏が、側貌では上下唇の突出と下顎の後退が認められ た。口腔内所見では、overbite 2mm, overjet 4mm, 上顎の左右第一・第二大臼 歯と下顎右第二・三大臼歯、左第一大臼歯が抜歯されていた。下顎左第二小臼歯の舌側転位 と右側切歯から第二小臼歯にかけて反対咬合が、また左側切歯にも反対咬合が認められた。エックス線所見では、左第三大臼歯の水平埋伏、また欠損部の歯槽骨の水平、および改善垂直的吸収が認められた。セファロ所見では、McNamara lineよりpog. −12mmと下顎後退を伴うdolico facial typeであった。口腔習癖として舌の前方 突出を認めた。
【診断】
多数歯欠損を伴う叢生
【治療方針】
1.口腔衛生指導と歯周病処置
2.右側の反対咬合の改善のため、上顎歯列弓の側方拡大
3.マルチブラケットシステムにて歯列排列、咬合緊密化をはかる。
4.欠損部補綴処置
【治療経過】
口腔衛生環境は本人のモチベーションも向上し、早期に改善した。上顎歯列弓の側方拡大はクワドヘリックスにて行った。下顎左側第二小臼歯の舌側転位 はリンガルアーチを併用し、マルチブラケットシステムにて咬合の緊密化を図った。歯槽骨の水平・垂直的吸収部分が認められるため、歯周病処置を併用した。動的治療期間50か月、保定装置は、上下顎にラップアラウンドリテーナーを使用し3年 9か月を経過した。
【結果】
動的治療期間が非常に長期にわたったが、8 to PTVは治療前8mmより治療後20mmへと移動が認められ上下顎大臼歯欠損部空隙は全て歯の移動によって閉鎖され、咬合の改善を得ることができた。
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