低位舌を伴うAngle ClassIII 上顎3 3低位唇側転位の下顎前突症例
中藤剛会員
患者は11歳10ヶ月の女性でAngleCl.III、高橋分類下顎前突3類、上顎犬歯低位唇側転位1類+2類+3類の下顎前突である。歯幅は+2SDとやや大きく上顎はスペース不足、UL6は捻転し、近心転位の為Cl.1の咬合関係を呈す。異常嚥下癖があり、低位舌の状態である。
治療方針、方法としては上顎骨は特に異常はないが、相対的に顔面は陥凹感を呈すので、下顎骨の発育抑制と、上顎の発育を期待してUL2-UR2の前方拡大とルートラビアルトルクを図るために嚥下の機能訓練とAdvanced U-Archを用いた。OMT(OralMyofunctionalTherapy)は家族、本人の自覚がなかなか得られず進展しなかった。側方歯の萌出完了を待ち、15歳の誕生日後再診断を行った。下顎骨の発育が旺盛で下顎の前方位と陥凹感が助長された。上顎前歯はトルクが不十分で唇側傾斜によりスペースが獲得され犬歯の低位唇側転位は改善された。しかし、前歯のオーバージェット、バイトは浅く、側方歯はCl.III状態で咬合不安定のため、LL8,LR8を抜歯して下顎歯列の遠心移動をM.B.Sで行うことにした。同時にOMTの完成が治療の完成である事を患者に納得させて治療を継続した。上顎のバイヘリックスの圧痕が舌に付くようになったが、位置がもう一息で更にOMTを意識させた。M.B.S開始後2年が経過し、嚥下が正しく出来るようになったと時期を同じくしてバイトの安定が急速に進み、17歳11ヶ月で治療を完了した。上顎の抜歯はUL8,UR8を予定していたがUL7,UR7が減形成で萌出と同時にカリエスとなり、UL8,UR8の歯冠形成をレントゲンで確認後UL7,UR7抜歯に変更した。今夏、UR8が萌出開始し経過を観察中である。
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